猫は君を永遠に愛します

永遠のテーマ【猫とは…猫の幸せとは?】

第4話 彼女に決めた!

あらあら、空は入院したようですね。
これまでマナちゃんを置いて外泊することはなかったのに…。
ビビりのマナちゃんをどうするのでしょうか?
影の声である私も本当に心配です。
空の決断と様子を見守ることにしましょう。

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すぐそこにマナがいるのに!病室の窓から見える景色
空は消灯になったベッドから窓の外を見て考えていました。
『明日からどうしよう、カリカリとお水とトイレ。マナの世話を誰に任せたら1番ベストなのかな』


あの人?この人?かな…
頭に浮かぶ人たちがアパートの扉を開ける姿を思い浮かべました。
『そうだわ!やっぱり彼女しかいない』
直感で決めた人は以前アパートに遊びに来た時に、ビビりのマナちゃんを抱っこした時に失禁しても構わずにマナちゃんを抱っこし続けていたのです。

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失禁をしたビビりのマナちゃんを抱っこし続けていてくれた彼女

口調はハキハキ! 歯に物をきせずに言う彼女は、この地方の方言で言えばハバシイ(すばしっこく賢い)とかキッカン(勝ち気) な子です。
空は彼女が誰よりも心根の優しい子であることを知っていました。

翌朝、空は彼女に電話をかけました。
「入院したんだけど、マナのカリカリとトイレお願いできる?」
仕事が終わったらアパートの鍵をもらいに病院行くねという返事が返ってきました。

その日から『彼女しかいない!』の空の決断が正しかったことを証明してくれました。
オロオロとマナちゃんを心配して空が尋ねる質問にも端的に分かりやすく答えてくれました。
2日目には撮った写真を送ってくれました。
そして…
な・な・なんと~!
ビビりのマナちゃんが彼女の差し出すチュールに釣られて洗濯機の後ろから出て来ようとする写真と共に「カリカリ全部食べてあるし、ひとりでオモチャで遊んでいるよ」という言葉が添えてありました。

ホッと胸を撫で下ろす空でしたが「なぜマナがオモチャで遊んでいるとわかるの?」と夜電話して彼女に聞きました。
「だってオモチャの位置が違うもん」
なんという観察力!さすがハバシイ奴(すばしっこく賢い) と感心しきりと同時に…

『やっぱり彼女に決めた!』
が正しかった事を確信する空でした。

そんな入院生活でしたが3~4日と言われていたのに、4日を過ぎても退院や外出の許可がおりません。

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空が夕焼けに染まる頃【マナに会いたい】

空は流れる涙を堪えきれずにいました。
今日は医師の回診の時に外出の許可をもらおうと待っていましたが、その日に医師の回診がなかったのです。
朝9時~午後5時までの点滴は続いています。
その後も看護師さんの体温計測と血圧測定と血液内の酸素計測もあります。
時間外入り口の扉は午後10時に閉まり、朝6時に開きます。

【マナに会いたい】

空は朝6時に時間外入り口が開くと入院する時に乗ってきた自転車に乗ってアパートへ向かいました。
たった5日間人が住んでいなかっただけの部屋は、誇りで荒んでいました。

「マナごめんね」
空はマナを抱きあげると頬ずりをしました。
窓際には世話をしてくれた彼女が置いてくれた椅子ひとつ。マナが外を見ることが出来るように置いてくれたものでした。
その椅子の座布団で空と遊ぶマナちゃん。

少し遊ぶと座布団を埃っぽい床に置いて、寝転びました。
マナちゃんが1番安心するのは…
空の腕の中でフミフミチュチュをすることだと空は知っていました。
マナちゃんは拾った翌日から空の腕の中で大きくなりました。
誰にも心を許さないマナちゃんは空をお母さんだと勘違いしたからです。

そんなに時間はありません。
7時には看護師さんが病室に来ます。
空はマナちゃんに「ごめんねマナ、待っててねマナ」と言うと病院まで自転車に乗って戻りました。
病院の泊まりの看護師さんの朝は早いです。
空は黙って外出してアパートに帰ったことに罪悪感でいっぱいでした。
点滴をするために病室に来た看護師さんに打ち明けました。
看護師さんは医師に言わなくても自分には言っていかないと駄目です、何かあったらどうするのですか?と諭されました。
「本当にすみません。どうしても猫に会いたくて」と言った空が1番自分がした悪いことをわかっていました。
医師も看護師さんも空の病気を治すために尽力してくれていると思うと涙が頬をつたいました。
そしてしばらくしか会えなかったのに直ぐにまた別れた自分をマナがどんな気持ちなのだろうと思うと後悔しかありませんでした。

「弱い飼い主でごめんね、マナ」

その2日後に退院許可が出ました。
【マナに会える】
その事だけが空を支えていました。
退院の朝、次の診察日の時で支払いは良いですからと言われましたが、仕事の事を考えると今銀行に行って支払った方が良いと思った空。
銀行に行って病院に戻ってくると1階の待合室のソファーに倒れ込みました。
『退院だというのに何故こんなに体が辛いのだろう』
病室まで看護師さんが車椅子で運んでくれました。

医師の退院許可は取り消されることもなく、点滴が終わり晩ご飯を食べるとマナちゃんの待つアパートへと自転車を走らせる空でした。

この後もマナちゃんの待つアパートへ帰った空に思いがけない病が待っていたのです。
この続きは次でお話ししたいと思います。
だってマナちゃんと空が、幸せそうに同じ布団の中で眠っているのですから…。