猫は君を永遠に愛します

永遠のテーマ【猫とは…猫の幸せとは?】

第16話 マナちゃんごめんね

マナちゃんのお腹に宿った小さな4つの命。
空は自分の不注意で起きた事の重大性に悩みに悩んでいました。

そしてルイの飼い主さんの「マナは体が小さいから産むのは大変かもしれないけれど、産ませてやってくれないか」の言葉も堕胎と避妊同時のきつい手術をするブレーキになっていました。

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妊娠したマナちゃん

主治医からはもうそろそろ決断しないと手術が出来なくなるとの連絡を受けていました。
猫が妊娠してから出産までの期間は非常に短い事と同時にお腹の赤ちゃんが大きくなれば堕胎が難しくなるという事は空にも十分わかっていました。

もう明日明後日にも決断しなければならない時まで来ていました。
ルイの子供を産ませてくれと言うルイ君の飼い主さんから主治医に連絡をとってもらう事にしました。

空はその日手術になってもよいように会社の有給休暇をとっていました。
ルイの飼い主さんからメールが来ました。
「やっぱりこのアパートは猫1匹しか飼えんしマナの子供は無理やわ」
どうやら看護師さんから産まれてくる赤ちゃんにかかるワクチンや諸々の費用の話しなどを聞いたことは後からわかりました。

な・な・なんなんですか~!

やはりルイ君の飼い主さんの言葉を信じた自分がバカだったと空は血の気がひく思いがしました。
メールが届いたのは11時を過ぎていました。もうギリギリの時間でした。
そして主治医に電話をしました。
「マナは絶食していないのですが、手術大丈夫でしょうか?」
「12時半までに来て下されば絶食していなくても手術できますから大丈夫です」

空はマナちゃんを連れてギリギリ間に合う時間のバスに乗り込みました。
動物病院では「マナちゃんをお預かりしますね、4時になれば手術が終わっていますのでお迎えお願いします」

後ろ髪をひかれる思いで一旦アパートに帰る空はバスの中でドキドキと吐き気を抑えるだけでやっとでした。
『マナ、手術を無事に終えて戻って来て』
アパートの部屋に戻ってもマナちゃんがつらい手術をしていると思うと何も手につきません。

時間はあっという間に過ぎて空はマナちゃんを迎えに行くバスに乗り、病院の扉を開けました。
『マナちゃんは大丈夫ですよ』という看護師さんの後ろから『やはり4匹お腹にいたよ』と主治医さんが言いました。
マナちゃんは麻酔も覚めてキャリーバックに入っていました。

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手術を終えて

避妊手術の当日は病院で一泊すると思っていた空ですが、主治医の敏腕はたいしたものだとあらためて思うと共に、マナちゃんといられることを感謝しました。
お腹の傷は痛々しいくらいでしたが、マナちゃんも空といると安心しているようでした。

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傷が痛々しいマナちゃん

ルイちゃんの飼い主さんには、マナちゃんの傷が治るまでルイちゃんを部屋に入れられないことを伝えました。
何日か経った頃、ルイくんの飼い主さんがスーパーで買ってきた花を持って来ました。
空は「私も貴方もルイくんとマナの4つの小さな小さな命を殺してしまったんだよね」とポツリと言いました。

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部屋に入りたいルイくんに心が痛む空

空はその頃に海の波が岩を削るような悲しみがありました。
その事に加えてルイくんの飼い主さんが引っ越して来てから、酔って言う言葉を真に受けていた空はとことん神経と心が限界に疲れきっていました。

飼い主さんのいるルイくんと暮らす事は本当に…本当に難しいことでした。
まるで出口のない前途のただ中にいるように思う空でした。

12月に入り、空は大きな決断をします。
それは次のお話しで…。