第7話 どんな猫なんだろう?
アパートの同じ階には、空とマナちゃんが住んでいる部屋だけになってから半年以上。
まるで時が止まったかのような日々でした。
そこへ引っ越してきた人と猫。
ドキドキで打ち明けた
【あの~家の猫はエイズ感染なんです】
【大丈夫っす】
少しホッとすると同時に戸惑いを隠せない空です。
でも雌だって言ってたわよね、マナと同じ雌で良かったわ
これがどんでん返しになる日がくるとは思ってもいない空でした。
どうやら帰宅時間も隣の隣の人とは似通っているようです。
「こんにちは、猫ちゃんのお名前を教えていただけますか?何歳ですか?」
と声をかけました。
「ルイです、多分2才くらい」とだけ言うと、さっさと何処かへ行ってしまいました。
どんな猫さんなんだろう?
見たい・見たい・見たい~!
猫同居型アパートになってから初めて猫を飼っているお宅が引っ越していらっしゃったのですから。
空の願いはしばらく叶うことはありませんでした。
夜になると赤ちゃんが鳴いているような声が聞こえました。
「んな~んな~」
何なんでしょう?今までこんな声を聞いたことがありませんでした。
しかも外から聞こえて来ますが徘徊をしているかのようです。
それは1週間近く続きました。
その間に猫さんの飼い主さんに会った時の事です。
「あの鳴き声はルイちゃんでは?大丈夫ですか?」と空は心配になり聞きました。
「大丈夫っす、あいつ頭いいんで」
な・な・なんですか~!
なんというユニークな飼い方なのかしら…
引っ越ししてきてからルイちゃんという猫は縄張りを訴えるように「んな~んな~」
姿は見たことがないけれど、飼い主さんはベランダの窓を昼夜問わずいつも猫さんが通れるほど開けっ放しでした。
●
空、貴女はマナちゃんを育てるにあたってベランダの窓を網戸を開けずに「マナ危ないよ車来るよ」と1ヶ月言い続けていましたね。
そして1日アパートでお留守番しているマナちゃんがかわいそうだと朝と夕方にマナちゃんと短い散歩をしていましたね。
貴女の考えは【猫にとっての幸せとは?】
ケージの中で過ごす、去勢や避妊…。
初めて子猫を拾って育てた貴女は迷うことばかりだったことでしょう。
─ だから隣の隣の猫の育て方にも驚きながらも【なんというユニークな飼い方なんだろう】としか思わなかったのかもしれません。
さてさて貴方がこれから直面する出来事が始まろうとしていますよ!影の声である私は少し黙ってマナちゃんと貴女を見ていましょうね。