猫は君を永遠に愛します

永遠のテーマ【猫とは…猫の幸せとは?】

第8話 引っ越してきた猫に会う

隣の隣に引っ越してきたルイちゃんという猫は鳴き声だけは聴こえますが、なかなか姿を見ることが出来ませんでした。
ある夜、空と外に出たマナちゃんは猫(ルイちゃん)の匂いを感じたのかルイちゃんの部屋の玄関の前で立ち上がって匂いを確認していました。
『マナは猫が引っ越してきたことがわかるのね、犬は鼻がいいと聞くけれど猫も鼻がいいのかしら』と空は思いました。

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隣の隣の玄関の匂いを嗅ぐマナちゃん

そんなある日の夕方、ベランダの洗濯物を取り込んでいた時のことです。
ひょこんとベランダの柵の向こうに、こちらを見ている猫がいました。
「あら!もしかするとルイちゃんかしら」
空はスマートホンをとっさに出して写真を撮りました。
一目見ただけですが、片耳がアメリカンカールのようにクリンと外側にめくれていました。
「可愛い・・・」と空は思いました。

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ベランダから覗いていたルイちゃん

その数日後、仕事から帰ってきた空はバッタリとルイちゃんの飼い主さんに会いました。
「こんばんは」と挨拶をする空にルイちゃんの飼い主さんが「僕は小学校の時にカビの生えたパンを食べていたんだ」と自分の育った境遇を話したのです。

『な・な・なんなんですか~?』

何だか難しそうな人と感じていた空は驚いてしまいました。

動揺しながらもルイちゃんの事が気になっていた空は「ルイちゃんは家の中ですか?」と聞きました。
「おいルイ!」と言うとルイちゃんがヒョコンと玄関から出てきました。
『やはりベランダから覗いていたのはルイちゃんだったのね』そう思った瞬間の事です。
「ルイと遊んでいて下さい」と言うと彼はどこに行くのか走り去ってしまいました。

『そ・そ・そんな~!』

初めて会った猫が空と遊べるはずはありません。
そんな空の思いのとおりに、ルイちゃんという猫はトットットと走り去っていきました。
大丈夫かしら…
一応遊んでいて下さいと言われた空はこのまま放っておいていいのかしら?とアパートの回りを見てみましたが、ルイちゃんの姿はありませんでした。
部屋では空の帰宅を待っているマナちゃんが待っています。

「マナ、ただいま」と言いながら玄関の扉を開けました。
季節は夏!
空が帰宅する6時はまだ明るいです。
着替えて1日お留守番していたマナと短い散歩に行きました。
マナちゃんはとてもうれしそうです。
散歩はいつもアパートの後ろの駐車場です。
空き地のフェンスに沿って歩くマナちゃんはフェンスから飛び出たネコジャラシの草で遊んだり。
ソロリソロリと歩くマナちゃんの白い4足の足袋が何ともきれいだなと思う空なのでした。

アパートの後ろの駐車場は何台か車が駐車している程度ですが、その方々はマナちゃんが空と散歩をしていることがわかってくれるようになり、すごくゆっくり入ってくれるようになっていました。
とはいえ、ビビりのマナちゃんが車に驚いてベランダへ走って戻ると危ないので、空は細心の注意を払い5分~10分程度の短い散歩でした。

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駐車場と空地の間のフェンス際を散歩するマナちゃん

休日の事です。マナちゃんはプランターの花に水をあげる空とベランダにいました。
そこへルイちゃんが現れたのです!
仲良くなれるといいなという空の思いとは逆に、マナちゃんは威嚇するような素振りを見せました。
ルイちゃんはそんなマナちゃんに何もしないよというように座りました。でもマナちゃんは他の猫に会うこともなく育ちましたので、仲良くしようというよりもやはり警戒し好戦的です。
そんなマナちゃんをルイちゃんが追いかけました。
マナちゃんはベランダから部屋の中に逃げ込みました。

空はその様子を見てルイちゃんが何とかマナちゃんに自分は何もしないよとアピールしているのを見逃しませんでした。
ルイちゃんはまるで「近くに住んでいるんだから少し仲良くしたい」と思っているようでした。
マナちゃんはルイちゃんのように外に慣れていない世間知らずなんだと空は実感したのでした。

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なに? ベランダのマナちゃんがルイちゃんに気がついた

さてさて影の声である私はここまで黙って見ていましたが…
少々お話しさせて下さいね。

貴女は隣の隣の隣人さんの身の上話しを聞いて多分『かわいそうな人なんだな』と心の中で思ったことでしょう。
そしてルイちゃんにはマナちゃんと仲良くしようとしていることを直感的に感じたのですね。
影の声である私は貴女が育ってきた過程と形成されたアイデンティティをよく知っています。
『短所は長所、長所は短所でもあるんですよ空』

この時から厄介な方向へ物事が向かっていくのですが、続きは次のお話しへと進みます。