第2話 偶然の一致
いつもはバスで通勤していますが、たまに自転車行くこともあります。
「あらっ~!バス時間に間に合わない」と言うときです。
そんなある日のことです。仕事を終えて自転車で帰る途中、この街ではかなり有名な小路があります。
車は通れません。人と自転車のみが通ることができます。
その小路に入って
「あ!猫がいる」と自転車をとめました。
首輪もありませんが、誰かにエサをもらっているのか、痩せているということはありませんでした。
丁度その日の昼休みに市場へ行きました。これはすごく珍しい事です。1時間の休み時間は食べるだけでも手一杯です。しかし、なぜかこの日は市場でお弁当を買おうと思いました。
そしてお弁当と夕飯のおかずになりそうなニシンの煮物を買いました。
私は自転車のカゴの袋からニシンの煮物を取りだし、その猫の近くに置きました。
すると、うれしそうではありませんが食べてくれています。
そこへちょうど通りかかったアベック(観光客でしょうか)が「あっ、猫だ可愛いね」と立ち止まりました。
私は自分の猫でもないのに、可愛いと言う優しいカップルに好感を持ち、「飼い猫ではなさそうなのですが」と言いました。
カップルが立ち止まる前に私は手に持っていたカメラで写真を撮りました。そして猫に会えたうれしさでルンルンでマナの待つ家にペダルも軽やかに帰りました。
自転車をこぎながら数年前のある事を考えていました。
私はあの小路で小さな猫を見たことがありました。その子は呼び掛ける私の小さな声に驚いてスタスタ走り去りました。
もしかするとあの時の子猫なの?と思ったのは【今会った猫がどこか懐かしそうな顔で私を見た】からです。
優しい目をしていました。
まさかね、そんな事あるわけない。
【猫が人を覚えているなんて】
私はその思いを書き消すように首を横に振りました。
家に帰り、撮った写真を見て【この猫どこかで見たような】とスマホのアルバムを過去にたどっていくと…!
何とベランダに来た大きな猫にそっくりです。
しかし、小路で会った猫(向かって左)は笑っているように見えます。
ベランダに現れた猫は不安そうな顔です。
そしてこの後、ベランダにまた大きな猫が来るのですが、違いがわかる写真を撮ることになります。
尻尾が何となく違うかなというくらいなので定かではありませんが。
とにかく顔や縞模様までそっくりです。
今まで猫に会うのは1年に1回くらいしかありませんでした。
【何か物事が動き出している、これは何だろう?】
マナと暮らして1年半、マナと私に何かが起きそうな予感がしていました。