猫は君を永遠に愛します

永遠のテーマ【猫とは…猫の幸せとは?】

第14話 恥ずかしかった日

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すっかり空の家に慣れたルイくん

ルイくんの飼い主さんと揉めて、警察沙汰となりましたが、アパートに戻ってきた空。

その後、取りあえずはアパートを引っ越したほうが良いように考えました。
それにはルイくんの飼い主さんとの話し合いも必要です。
なぜって空はルイくんを飼い主さんに任せなければいけませんでしたし、かといって空の部屋に来るルイくんが心配でした。

ある日、マラソンの練習に行く飼い主さんに会いました。「あのルイくんの事なんですが」と空が言いました。
「あげる」と一言だけ言うとスタスタ走って行ってしまいました。

な・な・何なんですか~!あ・あ・あげる~?

空は呆気にとられましたが、話し合いは必要だと思いました。

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退院して1ヶ月経った頃のマナちゃん

警察沙汰になる少し前の事です。
空とルイの飼い主さんは仲の良い時もありました。
そんなエピソードのひとこまを書いておきましょうかね?…空さん。

土曜日の昼頃です。
「おい、お前一緒に焼肉屋行くぞ!○○橋知っとるやろ、はよ用意しいまいや(しろ)」

いつも空の事を『お前』と言うのは、どうも口癖か礼儀を知らないのかのどちらかはわかりません。
空は今まで生きてきて他人からお前と呼ばれるのは初めてでした。しかも近所に住んでいるだけの人に…。

「わし走って行くし、お前は自転車で来い」
と言うとさっさと走り出しました。
行きは緩い上り坂で、脚力のない空は遅れてしまいました。ルイくんの飼い主さんは見えません。
『○○橋だったよね』と思いながら、きつい坂になると自転車を押して歩きました。
「おい!遅いぞ」とヒョイと小路から声が聞こえました。『マラソンしてる人に勝てるわけないでしょ』と心の中で呟きました。

自転車を停めてガラガラと戸を開けると、カウンター席へ。かなりの歳のおばあさんが1人で切り盛りしているようです。

カウンターに座ると「ばあちゃん、先ずはビールとレバーお願いします」と慣れた感じで注文します。
空はおばあさんに「あんたは?」と聞かれて「豚バラとシロお願いします」と言いました。

そのうちに酔いが回ってくると「お前ダラやろ(バカの方言)」を連発するルイの飼い主さん。
おばあさんの目付きが変わりました。
「だからそのダラって言うがやめろって言うとるやろ、他のお客さんに迷惑や」
何度かその言葉があり、ようやく「おい帰るぞ」とルイの飼い主さんは席を立ちました。

空はなだめるように玄関の方へと促しました。
そしてお店を出るときに何も言わずにペコリと頭を下げましたが、恥ずかしくて顔が真っ赤か真っ青かわかりませんでした。

帰り道は千鳥足で歩く飼い主さんが車に跳ねられるかと空は自転車を押して歩きました。
美味しそうな柿がなっている家の前に差し掛かるとおじいさんがいます。
「あの1つでいいのですが、柿をいただけませんか?」と空は尋ねました。
三脚を出して柿の実を採って手渡して下さいました。

すると千鳥足のルイくんの飼い主さんが急に、おじいさんに「これとっとけや」と千円札を渡そうとしました。
みるみるおじいさんの顔が変わり「そんな事するんなら柿返せ」と言いました。
空は申し訳なくて悲しくて「この人は酔っているんです。今度必ずお礼に伺います」と言うと柿をしっかり胸に抱いて、ルイの飼い主さんを引っ張るようにしてペコペコ頭を下げながら半泣き状態でその場を立ち去りました。

さて、ルイくんとマナちゃんの話しとはずれてしまいました。
だけど空は書いておきたかったのですよね…
楽しい事が結局は災難になってしまうルイくんの飼い主さんとの日々を。